どうしても上滑る。

多くの人の苦しみの根幹は、ここにあります。

自己否定するから、実際の自分とありたい自分の間に大きなギャップが生まれます。ありたい自分を自分が見続けるために、自己陶酔によってそのギャップを埋めます。

そのギャップには、うすうす気づいている自分の中のあらゆる感覚・感情が入っています。「とにかくうまいことやろう。今すぐ理想の自分でいるんだ」とずる賢く発想するから、「うまくいっていない」という認識につながる不安などの感情や痛みなどの感覚は、すべて抑圧されます。

まわりからはそれが見えているので、まともな人は離れていきます。余計に自覚する機会を得られなくなっていきます。周りに残るのは、同じくらい激しい自己否定を抱え、同じように自己陶酔に浸ることが日常になっている人たちです。

抑圧した感情や感覚は、アイススケートのリンクのようになります。足元がツルツル滑るのです。一歩でぐっと前に進めるので、この状態を「うまくいっている」と認識してしまえるのは「現実は変わらずとも、うまくいっている風になればいい」に乗っ取られているからです。こうして、いつもうわ滑りします。

初出: 2019年1月28日