わたしにとって、クレオールでないアフリカ文学としては初めてかもしれない、ナイジェリアの作家の本を読みました。
災厄の多いエリアは、あやまった理が良かれという思いで、せっせと継承されていることが多いのですが、この小説は、勇気の履き違えの形で、その幾つかをあらわし、正しい理が浮き彫りになる描かれ方がされていました。
いわば、暗黙の了解として合法化された家族の誰かによる殺人も、無意識レベルで共有されてしまう真実は、以下のようにあらわされています。
「夜にひとりで歩いていて、道すがら悪霊とすれ違ったときのように、漠然とした恐怖が襲いかかり、頭が膨れ上がる感じがした。その瞬間、心の中でなにかが壊れてしまった。」(『崩れゆく絆』アチェベ著、光文社古典新訳文庫、p103)
また、呪術のような広義での宗教に拠ってきたからこそ、新しい宗教に足元を掬われる様子も描かれています。現代においては、芸能の形で同じようなことが起きていきますよね。より異文化にフォーカスしてこの本を読むなら、男型の罪/女型の罪という考え方などは、面白くも映るのでしょうか?いずれにせよあまりに違い過ぎて、全く共感できないところが「わざわざ読んだかいがあって」良かったです。
全く共感できない者同士がたくさん住んでいるこの星で平和を願うなら、安易に類似点を探して目を曇らせるのではなく、あまりにも違い過ぎると経験していくことが、要になると思うからです。
初出:2020年6月17日