敢えて、もてなさない。

「(甘いものやカロリーの高いものは)たまにしか食べてないのに、太る」「変なものはほとんど食べてないのに太る」と思ったことがありますか?

以前、茶道のおうちに生まれ育った友人が、我が家に遊びに来てくれた時、心からこういってくれました。

『もてなさないのが、一番のおもてなしだね。』

急に有名どころのケーキを買って来たりすることもなく、わたしが京都に来て初めて知り、大好きになったまくわうりといつものお茶をだして、景色と会話と京都にいる感覚を楽しんでもらうようにしました。

まくわうりは、メロンの親です。あっさりしていて、梨より柔らかく、お盆の頃にいただくと、夏の暑さにより知らず知らず疲れのたまった身体に、しみわたるんです。その後も、普段から「一期一会」(お茶のこころ)を真剣に考えるその友人は『あの時のまくわうり、美味しかった。』と、何度も伝えてくれました。

心を込めれば、凝っていなくても、飾られていなくとも、あとあとまで心に響き、いいお付き合いにつながっていくと思うのです。無理のない範囲で、見えないところを整え続ければ、生きているだけでいるだけで、一期一会のおもてなしになるんですね。

見えないところを整えることは、空間をしつらえることでもあります。見えないところを整えることで、茶室や客間のような、特別な限られた空間でなく、「地球」という空間をしつらえていけるなと、思いました。

初出:2013年7月30日