今、あなたがいるお部屋の中を、ぐるりと見渡してみて下さい。広く感じますか?窮屈に感じますか?みなさんが、同じお部屋のまま、広がりを感じたい時、どんな工夫をしていますか?
実は、非対称のような一種の不完全性は、空間に広がりをもたらします。だから、対称なものは、非対称にしてあげると、お部屋に広がりが出ます。それは、不完全性があなたを招き入れてくれる、招待状そのものでしょう。
大工さんは「木に任せろ」と言います。それは、大工さんの側で「これが完全だ」と閉じて、計画や技術を木に押し付けるのではなく、大工さんの方が、空っぽになることで、木の性質と真に出会うスペース自体を呼び込む不完全性を、あらわしているのではないでしょうか?
武道も同じでしょう。相手が向かってくる力を、空っぽの自分で受けいれて、相手に任せると、結果的にその力をつかって、相手を倒すことになるのが武道です。
茶室も同じです。茶会ごとに毎回、すべてを片付け、空っぽにします。空っぽだから、客に任せることができます。たたかいを横に置いた静謐な時間も流れ、一期一会がうまれるのです。
不完全性を生きてこそ、そこに多くが招待されていくのです。今風にいえば、お客さんに使い方を委ねられた商品・サービスは、お客さんによって、付加価値が生まれます。
後は天に任せるだけとなった時、目の前の相手に委ねてみると、そこに真の出会いが生まれていきます。わたしの提供するコーチングは、コーアクティブ・コーチング(R)をベースとしていますが、コーアクティブとはそういうことであると、いつも思っています。
お部屋に広がりを感じたい方、こころに広がりを感じたい方、不完全性を生き始めてみませんか?今日という、多くの人の記憶がぎっしりつまった日に、少しでも広がりがもたらされますよう、いつも通り祈ります。
初出:2015年3月11日